前回までは、「土砂災害から学ぶ」・「活断層から学ぶ」をご紹介致しました。今回は、地震による付随的な危険性として建物等の倒壊の危険性から学ぶことをご紹介いたします。地震が起きれば、大きな揺れによって、必然的に耐力を失った建物等は倒壊の危険性が一層高まります。
今回の熊本地震においても、数回にわたる大きな余震による建物の倒壊の犠牲になられた方も多く、また、建物の外周を覆っているブロック塀の下敷きになって犠牲になられた方もいらっしゃったのは記憶に新しいことかと思います。
取りあえず、外に逃げれば安心と言うことだけではいけないと言うのが心に残ります。そこで、今回はブロック塀の倒壊の危険性について考察してみてみたいと思います。
全国建築コンクリートブロック工業会の調べによると、ブロック塀について次のように説明されています。
「ブロック塀は、狭い国土で生活する私たちにとって重要な外構構造物として建設され、プライバシーの確保、防犯や防火などに役立っています。しかし、地震などによる倒壊の事例が報告され、通学路、避難路、及び不特定または多数の人々が通行する道路に面するブロック塀の安全確保は、地域社会の共通する願いです。ブロック塀の構造、耐久性、転倒防止対策を理解して、自己点検してみましょう。ブロック塀のような私的財産は、所有者の責任において管理するのが基本です。」
そこに「コンクリートブロック塀を必要とする理由の割合」というのが掲載されています。
(※参照:国土地理院)
となり、防災面の意識は少ないことが伺えます。
このことは、裏を返せば、作るときも防災面よりプライバシー確保、防犯、敷地境界明示目的を前提に作られており、防災面≒強度という面はどのように設計されているか興味深いところです。
神奈川県では、ブロック塀の安全性についてホームページで紹介しています。
背筋するためのスペースのない透かしブロックは、強度を保つための必要な鉄筋が設置出来ず、結果として、このような塀は強い地震の揺れなどで簡単に倒れることが想定出来ます。
透かしブロックが多く老朽化している | 透かしブロックが多く控え壁がない | |
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建物と同様にブロック塀も年数が経過するほど劣化します。建築してから相当期間経過し、その間適正な修繕補修等を行っていないブロック塀は多いと思いますが、これからかなり危険な状態と推定出来ます。外観から見ても、下記の状態の時は要注意です。
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控え壁は、塀が倒れるのを防ぐ役目を持ち、塀の高さが1.2m以上の場合は、塀の長さ3.4m以内ごとに控え壁をつくり、控え壁は基礎や壁に鉄筋をいれ、塀本体と一体化させます。
共に透かしブロック入りの控え壁のない広いブロック塀のため、危険性が高いです。
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老朽化した背丈より高いブロック塀も危険です。
以上、普段生活している街中にも色々と危険そうなブロック塀が多いことがおわかりかと思います。
これらを全て安全に直すことは物理的に困難なので、少なくとも、災害時にこの辺は行かない方が良いかな?地震があってもこの近く止まることはやめようなど、日常的に意識しておくことが大切かと思います。
皆さまも一度、休みの日などに散歩がてらお住まいの地域を散策され、通学路や通勤でお使いの経路などを見直すのもよいかと思います。
以上で、前回から引き続き、自然災害から学ぶことをご紹介させて頂きましたが、将来的にいつ、大地震や水害等の自然災害が起こってもおかしくはないですが、これらの情報を活用することによって、もしもの時に備え、何かのお役に立つ情報となれば幸いです。
今後も神奈川県不動産鑑定協同組合は、不動産の専門家として色々な場面で知識や経験を生かして参りたいと思います。
(不動産鑑定士 齋藤隆一)